お客サマは神サマではない

 

 

なんと東京の最低賃金は860円らしい。

 

 

 

久々に友達とイオンへ遊びに行ったらポケットWi-Fiを売るとても会話が上手なお兄さんと話し込んだ。ダーツの旅感覚で各地のイオンを回っているらしい。派遣社員なんだろうな。前にスポーツ量販店のオープニングバイトでお世話になった派遣社員のお兄さんの好きな言葉が「一期一会」でなんとも切なくなったことがある。

ポケットWi-Fiを売るお兄さんは言葉が巧みなので販売員としても、お客さんを楽しませるのも上手かった。私たち二人からバイトの話を聞き出して、友達はバイトをしていなかったので私は居酒屋で830円でバイトをしていることを伝えると、東京の最低賃金を教えてくれた。「860円以下はブラックす。ましてや居酒屋なんて夜遅くまでやるでしょ?時給は1200円くらいすよ」なんて言われて、一年かけてやっと30円あがったのに店長に「入りたての新人アルバイトと私は1ミクロンも変わらない」と言われて、深夜3時アパートに帰ってきて玄関にうずくまって声を殺して泣いたことがめちゃくちゃ恥ずかしくて色んなものがガラガラ崩れていく。そんな私の横で、かつて一緒にクリーニングのバイトをしていた友達が「クリーニングのバイトは730円くらいでした…やめてよかった~」と言っていた。確かに何も産み出されないだろうし、時間の無駄だったなって思った。

そんな話を聞いてお兄さんは同情したのか、「お姉さんたちにこれをオススメするのはやめるっす。もっといいことにお金を使ってください」と言ってポケットティッシュを大量にくれた。優し。

830円で買われる私の時間。こんな私に価値なんてないのだという気になって。誕生日の前日にケーキを買ってきてもらって、「みんなで食べた方がいいと思ったの」うんうん。みんなが祝ってくれるならね。「やりたいこと口に出せば叶うのよ」と言われて次の日ばいとなのに「明日盛大に祝われたい」とは言えない。ゆっくりと泳ぐ泳ぐ目。

当日はバイト終わりに掃除をさせられて、店長に「大変なときばっかりだな」なんて言われて、泣きそうになる。塵も積もってなんとか四万円稼いでも、家賃も光熱費も自分で払うのでほとんど何も残らない。

バイト代が低いからたくさんいれても店的にはコスパいいんだろうな。こんなとこでも都合のいい女やりたくない。

バイトは捨て駒。いつでもやめられる体制を整えてしゅぱっと投げ出したい。お客様に暴言吐かれたとき、いつか我慢できなくなってその人にビールぶっかける前に、やめなきゃ、やめなきゃ

 

 

泳ぐ目はどんどん遠くへ行く。早く帰ってきて。