髪を切ったら寂しくなった
ヘアアレンジをしない ヘアアイロンを持っていない 髪の毛染めても気づかれない 縮毛強制しなくてもしてるように見えると言われたことあるし
髪を切るたび、なんか散々だった
幼稚園の頃はそれが原因で友達ができないんだと思っていたし、「伸ばしたい」と母に自分の意思を初めて伝えて、母が選んだ白地に花柄の丸い飾りがついた髪ゴムでおさげにしてもらえるようになった頃には少しだけ友達ができていた
髪を切るたび、なんか散々だった
伸ばしていたのを、おばあちゃんにつれられて美容院へ行き、「もうやめてほしい」と言えなくて切られ過ぎて毎朝「学校行きたくない」と泣いた小学校三年生。短髪に黒板に頭打ってたんこぶつくってその日に集合写真とられて、写真の中の私は完全にカメラを睨み、顔に「とてもふきげんです」と書いてあった
髪を切るたび、散々だった
中学に入る前に渡された生徒手帳に「前髪は眉上」って書いてあって生まれてこのかたずっとパッツンで生きていた私は律儀に守った。しかし、みんな「そんなこと書いてあった?」とぬかしていた。本当に本当に本当に前髪早く伸びろの呪いをかけた。
このときからたぶん、髪の毛ってガードというか、自分を守るためにあるような気がしていた
髪を切るたび、散々な気持ちになった
高校生のとき、バッサリいった。お世辞で誉めてくれる人もいたけど、親友に「すみちゃんは髪長い方が女の子らしいよ」とか、席の遠い好きな人が隣の男子に「長いのと短いのどっちがいい?」と聞かれて「長いの」「聞こえてたらどうするんだよ」「聞こえてないって」のやりとりを聞いてクラスに髪を切っていたのは私と、彼の斜め前の野球部だったのでなんかもうどっちにしろゴッシャゴシャな気持ちだった。
それからなんかずっと伸ばしていた。成人式あったし。
それから彼にその丸聞こえだったことと好きだったことを二月に伝えた
不都合なことは全部短い髪のせいにしてた
やっと髪の毛を切った さようなら みれん
五年前の切った時より四キロ軽くなった
はやくきてね あたらしい恋