ポートレイト

 

今も昔も写真を撮られるのが苦手だ。snowの流行りにすらのらなかった。

 

小さい頃、カメラを怖がって一時期の写真全部目を全力で閉じている。ちょっと俯く流行を2・3歳にして取り入れている。この年齢だから余計可愛いく感じる。

昔からビビりだ。

 

 

高校の学生証の写真が毎回犯罪者みたいな風貌になっていた。

解像度が低いのと、写真を撮られることに緊張しているのが合わさって、毎年春に更新されていく学生証の写真を見ては、本当の私はこんな顔なのかと絶望していた。鏡でみる自分にかなり脳内で補正をかけているのだと思った。ブスだと自分で気づいていたが、悲しかった。牛乳石鹸でロン毛の髪を洗うカメラマンのおっちゃんの腕を信じたくなかった。でも、友達がそのカメラマンを気に入ってたし、自分の心の中で留めていた。

クラスの集合写真は引いているからかまだマシに見えた。足細かったし。

こんな学生証誰にも見せたくなかった。カバンの奥底で眠らせていた。しかし、学生証の写真は学生証だけの写真ではなく、先生方が持つ名簿にも使用されているらしかった。

美術の時間、先生はこういった。「まだ、全員の顔と名前を覚えきれていないからみんなの作業時間に名簿の写真を見ててもいいかな?」おじいちゃん先生に誰も返事はしなかった。無言をイエスと捉え、先生は名簿の写真と名前と我々本人の写真を見比べた。先生が見るだけで友達や好きなヒトは見ないからと心の中で唱えては、あの写真があの学生証以外にも存在することにヒンヤリ冷たい気持ちでいた。あいうえおの出席番号順 私は4番目。無言で顔を上げ下げする先生。見られるのにも緊張してきた。見ないように、意識しないように、目の前の木彫に顔を向けていたが、急に「すみか!」と呼ばれる。

「これお前か?別人だな!」

先生は、近づいてくるでもなく、教室の真ん中で私に向かって言った。顔を上げて、先生の方を見る。目が合う。たぶん、ぎこちなく笑っていたと思う。「う〜ん」と言ってまた名簿に顔を戻す先生。みんなに聞こえていたと思うけど、誰も私に興味なさそうだった。ゆっくりまた、木彫の方へ、下を向いてドキドキしていた。緊張と、写真への冷たい気持ちと、自分の容姿に対する悲しみと自分には見えてないけど、他人が見える顔の違いへの恐怖が溶けてく。

なんだあ よかった 補正ばかりじゃなかったんだ 犯罪者の指名手配犯みたいな顔は別人なんだ!なんだよかったあよかった!

なんどもよかったと心の中で繰り返していた。

免許証の写真もブスだけど、牛乳石鹸ロン毛のカメラマンに撮ってもらった3年間の私の顔が史上一番指名手配犯だった。

高校を卒業して、大学の学生証は、高校のときに願書を出したときに撮ったスピード写真だ。ちょっとスピード写真を後悔しているけど、高校の生徒手帳の写真の八億倍くらいマシに思えた。

もう2度とあのカメラマンに撮られることはないと思っていたら、成人式の前撮りでまた会ってしまった。もしやと思った。晴れ姿のはずが、前撮りの写真も化け物みたいで悲しかった。もう少し痩せていれば、つけまがなければ、引きつっていなければ....母がアイホンで撮ってくれた写真も、遠くからアップで撮っていて解像度が悪かった。お見合いに使うかもしれないと言われたが、私が相手なら絶対会いたくない。

そのくらいあのカメラマンに撮られた自分が大嫌いだ。

でも、友達が撮った最近の私の写真も、ゲテモノ感がすごかった。私は写真が嫌いです。本物が一番マシでかわいいおわり