学生 一人暮らし 仕送りなし で検索かけるのはもうやめようね

 

 

 

春休みが始まって2週間たった。

進学が決まった新入生の新居の希望を取り、不動産に電話をかける、仲介のバイトをした一週間。卒展に加え、学校の食堂がリニューアルされ、地域のニュースになり一般の人も入れるため、人だらけでうんざりだった。

雪も容赦なく降る。中学三年の時に買ってもらった安物のブーツの底が抜けて、半額で買ったプーマのスニーカーを履いて出かける。これが一番滑らない。ただ、高さがないから雪に埋もれたら冷たい。黄色だったからか、半額だった。こんな色の靴履いている人なかなかいなくて、足だけ誰よりもはやく春みたい。

 

4階の隅の教室で アパートの物件の紹介の紙が壁一面に貼られ、新入生とその親が紙とにらめっこしている。やはり、家賃は親が払うからか親の方が意気込んでいて、○万円以内で、インターネットも無料の部屋がお得なんですよね?と尋ねられる。だいたいは第一に金、その次に距離だ。しかし、安すぎても怪しいらしい。初日から暇だったので一緒にバイトしていた友人はおすすめ物件リストを作っていた。部屋が4万前後で追い炊きができて風呂トイレ別、2部屋くらいあって収納が多くてロフトがあってインターネットもタダで、大学から距離が近くて...。家賃を自分で払う、こどもが払うという家庭はいなくて、ここにいる新入生の親子全員と価値観なんて合わないんだろうなって気にしないようにしていた。

最終日、ついうっかり「おなかすいた」と口にだしてしまい、いつも最後だったのに一番最初に昼休憩で抜けられた。きっと誰も知らないし、人の顔を見ないようにして歩くのが常だった。学食へは向かわず、売店へ向かう。いつものパンが置いてなくてイライラする。早歩きでおにぎりコーナーへ向かおうとすると後ろから「すみちゃん?」と呼ばれた。振り返ると4ヶ月くらい会えなかった友人がいた。相変わらず細くって全体的に色素が薄かった。久々の再会に嬉しくてハグをした。

「顔見ないようにして歩いてるからさ、黄色い靴だなーと思って顔見たらすみちゃんだったの!」

人の顔を見ないで歩いている人間同士の奇跡の再会。新しくブーツ買ってなくてよかった!この友人は「君はバイトしてるのになんでお金がないんだい?」と直球できいてきた天然のツワモノだ。でも、訳を話すと「君はすごいな〜頑張ってるんだね、偉いな〜」って本当に驚いたように関心して頭を撫でてくれた。

(背が高い人間は頭を触られることに慣れていないので頭を触られるとすぐオチてしまうらしいですよ。背が高い彼を狙っている方は参考にしてみてください。私のこと狙っている人もどうぞどうぞ)

 

大抵の人はこんな風に認めてくれることなんてなくて、「すごいね」とは言ってくれるけど、たぶんみんなちょっと引いて、その後、関係ないようなしらっとした顔で生活してる。だから「生活費引き落としの口座残高1042円だった〜ぎゃははh」なんて言ったら普通に引かれるだろうなあ。ギリギリの生活をしている私にか、私の親にか。だから余計に嬉しくて、困ったときは助けたいと思うのかもしれない。この日から52%オフの春みたいな黄色いプーマのスニーカーを「幸せの靴」と呼ぶことにした。

春になったら友人がもどってくる。冬に負けないで歩き続ける。

 

 

券売機で一番端の

 

 

いつも乗り換えで降りるこの駅の街のことを何も知らない。難読駅

ジジイかババアか分からないロン毛の老人。妊婦かどうか分からないロングワンピースの女。寒いのに駅でバイバーイってドアを閉めずにずっとやってるカップルを睨むおじさん。席を譲らない中学生。譲ったところで拒否されるわたし。転んじゃった三歳くらいの男の子。抱き寄せる母親は注目の的。

電車に乗るとエモい。このド田舎を眺めていると本当に何もない事が分かる。田舎には何もないなんて間違ってると言われても、閉塞された空間に何か価値を見出だす才能が私にはない。自然がいっぱいでも、自然がいっぱいなところにしか住まなかったら自然の多さなんて分からない。ありがたみとか知らない。田舎ゆえにバスの本数が少なすぎるこの街では、土日の最終バスが15時、平日の最終バスが19時。逃したら十キロ歩く。そのくせ街頭が少なすぎるし、歩道は整備されていない。

人数が少ないからと行っても学校では先生の目なんか行き届かない。田舎の学校は逃げ場がない。リーダーがいたら皆、表向きそれに従って水面下ではもがき苦しみながら生きていくしかない。人が少なすぎるから誰にも見つからないなんてことはない。グループが複数合って誰もが無関心ならよかったのに、小さな小さな世界は誰も頼らない信じられない。毎日の通学路は何かから逃げ出すチャンスなんじゃないかと思いながらも、電柱を数えながらあと何本で右に曲がって犬に吠えられて、遅刻しそうな私たち兄弟のことなんか分かんない交通安全のおじちゃんたちが帰った後の横断歩道を渡って学校へ行く。保健室登校のあの子を除いて誰よりも遅く席に着くのが小学生のころの日課だった。

電車が好きだったような気がする。電車通学憧れだったな。見える風景が変わってきた。あの何もないところに戻る未来を考えるとまたいつ死んでもいいような毎日がくるのかな。

毎日を生かしてくれたのはなんだっけ

 

 

カラオケに行きたくないのうた

 

 

行きたくない 行きたくない

カラオケなんて 行きたくない

歌を歌っているだけで なんで

おかねとられるの?

歌を歌って 評価されるのは 音楽の授業と

ミュージシャンだけでよくない?

 

マイクなんて通さないで

あなたの鼻唄 聴けるだけで 幸せなの

私だけが聴こえる距離で 歌っていてほしい

この空間に溶けてしまいたい

 

 

 

 

枝毛

 

冬に思いっきり髪を切った

切りすぎて  寒いなぁと思ってたら

「長い方が良かった」って 小声で言うんだ

丸聞こえだよって思いながら

視線泳がして 聞いてないフリをした

 

そのまた二年後髪を切った

入試のために 10cm 季節は夏

何か言われるかなぁ でも

聞き取れるような距離にいれなくて 

二年前の声を思った

 

おもいの丈だけ伸ばしたの

たまに 揃える程度に ほんの少し切って

会えなくなっても 二年後

また会えるって 信じて

引きずってこの長さ

 

おもいの丈だけ伸ばしたけど

次、会えるのは いつか わかんないね

まだ諦められなくて

枝分かれしている 未来を

決められない これは呪い

 

 

快適じゃないここは四度

 

 

二階建てのアパートに住んでいる。

日当たりの悪い110号室。当時は私が最後にここに決めてあとは全部埋まったぽい。104号室がない。4と9は不吉だと思われるのでないアパートが多いらしい。

月々三万円のこの部屋が何畳なのか分かってない。物を置くとせまい。友達が四人泊まったら不満だらけのこの部屋に、ゲームキューブの本体だけ残してってあとは四万円とかの広い家の子んちに泊まってるらしい。 二度と来たことがない。

狭いけど天井は高い。高いところにロフトがあって、ロフトからなら座っていても頭をぶつけるくらい天井は低い。二階の男女の笑い声がうるさくて一回ぶん殴ったことがある。

水回りが最悪で、初めてお風呂に入ったとき、浴槽の栓を抜いて洗っていたら髪の毛と水が逆流してきた。まじか。、まじか。半年後くらいに直してって頼んだけど、配管から直さないと水の流れは良くならないらしい。半年我慢したならこれからも我慢してって。じゃあ、家賃二万五千円にして、って水道局に頼めないよなぁ。

あと、台所 の水道の蛇口が取れたことがある。もともと水漏れするなとは思ってたけど、ついにとれてしまったときはパニックだった。クラシアンて高いらしいじゃん。不動産を通して水道局を呼ぶ。家のトラブル全部「老朽化」のせいにして無料にしてもらってる。しかし、無料とはいえトラブルが多すぎる。

 

 隣の部屋は住んでるのか分からないくらい静かで、でも一回早朝の猫の交尾の鳴き声にキレて窓叩いてたときだけ音が聞こえた。二階は足音がうるさくて、半年くらいまで「グラマーな美女が住んでる」という設定で頑張ってたけど、男だった。知り合う機会があってうるさいかどうか聞かれたので正直に「遅刻しそうなときロフトから飛び降りてるでしょ。あれで目が覚める」って言ったら直してくれた。でも、私が天井ぶん殴ったことは喋ってない。足音と床でおならしてる音が聞こえてくるのは指摘しなかった。遊びに来た友達に「足音いいね」って謎に褒められた。

公園が近くにあって、子どもの笑い声がよく聞こえるおだやかな午後三時。遅く起きてようやっと洗濯物を干すにもそろそろ湿ってくる時間だけど構わず干す。あー終わったと思って昼寝をする。雪と課題がなければ怠惰な休日を過ごす。

 

でも、たぶん雪が溶ける前にここをでていく。

狭いし、水回りやだし、あと、二階の人に泣いてるの聞かれたら嫌だし。

 

二年間一人暮らしをして分かったことは、ひとりじゃどうしようもなくだらしないこと。部屋自体も私自信も、片付けとかだけじゃなくて、我慢せずに泣いたり笑ったり怒ったりする。誰かの前にいなければ私はしゃきっとできない。洗い物はちゃんとする。人より手持ちが少ないから、三日食器を貯めるなんてできない。「明日学校行くのにノーブラになってしまう」とか必要に駆られてちゃんとする。

ご飯が雑。おしゃれな物食べてるイメージとか言われるけど、エサみたいなのしか食べてない。結婚できない。

1500円の電気代と4000円のガス代。オール電化なら安いのになって思ったけど、「地震がきたら生き残れるのはガス」と言われたので、なるほど。と思った。二ヶ月に一度4000円の水道代。生活費が引かれる通帳がたまに残高2000円なこと。生活するということにかかるお金。安いはずなのにギリギリすぎる。

ねぇ、通帳見てると生きてるって感じする。でも、引きこもっていると死ぬ。

この部屋を生き返らせるために誰かおいでよ。引っ越す前にさ、人が来る前と来た後はうんと綺麗にするんだ。

本音と建前をまじえた私の部屋だから。

中学生すごろく

 

は〜じまるよ〜〜〜

 

席替えをする。くじ運はない。三マス戻る。

 

部活の大会で負けて泣く。それでもいいじゃん。悔しくて泣けるくらい頑張ったじゃん。それを強みにして生きていく。次回、サイコロ二回ふった数を足して進める。

 

好きな子に牛乳をあげる。or牛乳をもらう。ニマス進む。

 

字が汚くてテストが減点される。一回休み。

 

合唱コンクール「母な〜る 大地の〜懐に〜 我ら〜人の子の 喜びは〜〜ある〜  大地を愛せよ〜 大地に生きる〜 人の子ら〜 人の子ら〜 人の子 そのた つ つち〜にかんしゃ〜せよ〜」(えっ... 人の子 その他 つ 土に感謝せよ....?  つ って何...なんで急にその他でまとめた...?)正解は「その立つ 土に感謝せよ」四マス戻る。

 

トイレの個室でかっこいいメガネを取る練習をする。取った瞬間、手が滑り誤ってメガネが別の個室に入る。五マス戻る。

 

掃除のゴミ捨てじゃんけんを週4で負けて、金曜日に「グル組むなよ」と圧をかけたら勘は当たっていたものの、じゃんけんに負けてしまう。一回休み。

 

突如開かれた学年集会で「トイレで上から水をかけられた女子がいる」と報じられた日に風邪で学校を休み、全然関係ないのに男子に「もしかして水をかけられたのって...水をかけられたから風邪なんじゃあ...」と疑惑をかけられるも、友達が「そんなことされるような子じゃない」と否定してくれた。感謝。友達と一緒に二マス進む。

 

友達のカンペンケースを落として、凹ませる。ニマスもどる。

 

給食のメロンパン楽しみと自学ノートの日記に綴ったら先生が休んだ人のメロンパンをくれた。一マス進む。

 

とにかく先輩に挨拶する。無視されても心は折らない。一マス進む。

 

プールなのにワキ毛剃り忘れた。一マスもどる。

 

親友と好きな人がかぶる。私は「いない」っていう。でも、そのうちカミングアウトする。ふたりともがんばってほしいから一マス進む。

 

修学旅行で告白する。偶数の目がでたら付き合う。奇数だったら降られる。一回休む。

付き合ったものの、まわりにかわかわれまくって気まずくなる。破局。一回休み。

 

よくわからん手紙が回ってきたけどシカトしたら反感を買った。でも、俺にはともだちがいる。現状維持。

 

男だけでAV観賞会を行う。男だけで行ったのに裏切り者が出る。強そうな女子にあいつのAVの見方はこうだなどと説明される。ニマス戻る。裏切り者はぶん殴る。

 

誰も言ってくれないけどみんなにパンツが見えてる。一回休み。

 

給食当番の日、人気メニューのシチューを配ることに。好きな子に「多めにして」と頼まれる。えへへ 一マス進む。

 

音楽なんてやったことないのに指揮者になってしまう。音楽の評価が上がる。ニマス進む。

 

インフルエンザが流行するも、生き残る。三マス進む。

 

昨日、本当に些細なことで友達と気まずくなった。次の日、サイコロを降る。偶数の目が出たら何もなかったように話しかける。奇数の目が出たら避ける。避け続けて不登校になる。Game Over

 

 

 

明確で些細なことで人生変わるのかな。不登校なんて別に気にすることないって先生はおっしゃるけど、それで人生変わらないのかな。小学生の時、登校拒否ったけど、親は認めてくれなかった。だから、私は行ってないのと、嫌だけどちゃんと行ったのとで人生が変わっててほしいと思ってる人はいずれ死ぬ。

どっちがいいかなんて小学生でも分かること、大人になったらできなくなってしまう。どこに置いてきたのあの純粋な私。客観的に物事を考えて、選択する。サイコロなんかで決めない。いや、たまにはいいかもしれないけれどさ、責任を持とうよ。おまえの人生じゃん

 

キリトリ線

 

 

 

中学生の時、マンガを学校へ持って行くのはダメだったんだけど、部活の日とかに友達とお気に入りのマンガを貸し借りしていた。少女漫画「ストロボ・エッジ」を読んで 貸してくれた友達と 安藤くんがかっこいい だの 蓮は最後必死すぎだ などと盛り上がっていたら、私より少女マンガが似合う友達二人も読みたがって 最終的に回し読み状態に。ときめきを共有できるのは楽しかった。

 

 

ストロボ・エッジ」に 季節のにおい の描写がある。ヒロインの片想いの相手  蓮が恋人の前で「もう冬のにおいがするね」と言うが理解されず、ヒロイン 仁菜子も全然違うところで「秋と冬のにおいが半分になった!」と言うが仁菜子に片想いの安藤くんも「は?」だ。つまり、最終的にくっつく二人だけが「季節のにおい」を感じている。この二人だけの共通点に ぅわ~~!!っとした読者がどれだけいるでしょう。

 

 

土日の部活一日練習が終わって四人で帰る日があった。もう私は「ストロボ・エッジ」を読み終わって「君に届け」を読んでいた頃。雪はふってないけど、つん、と寒くて暗くなるのが早くなりかけてきた頃。薄暗いけど、空はほんのり青くて、みんな青い長袖長ズボンのジャージを着て歩きながら、一人が「冬のにおいがするね」って言い出した。みんな同じこと考えたんだと思う。貸してくれた友達が「ストロボ・エッジの真似だろ!」って突っ込んで、笑いながらみんなして深呼吸して帰った。

もう七年前くらいのこと。適当で必死で周りから見たら簡単なのに、よく絡まってはほどけなくなる毎日。でも、ちゃんとほどいてまた一緒に向き合えた日々。漫画の描写をなぞって下校できるなんて きっと もう ない。

 

冬の冷たい空気を吸い込んでさぁ もう 目を覚まさなくちゃね