初めて行った献血で色々貧血

 

 ずっと献血に憧れていた。別に注射が好きなわけではないけど、親がしているのを見て小さい頃は泣いてたらしいけど、ずっとやりたいって思ってた。

 初めての献血は仙台のアエル。ガラス張りのビル、確かF12。二階の入り口の庇には大きなヒビがはいっていた。一週間くらい前に報じられた 私と同じ歳ぐらいの女子大生がビルから転落して、とび降り自殺の疑いで調査を進めているというニュースを思い出した。F12から見る仙台の景色は灰色で小さい四角い建物がずっとずっとどこまでも敷き詰められているんじゃないかと思った。私はどっちから来たんだろう。あいにく天気は曇っていて街は人なんか住んでないんじゃないかって思うくらい濁って見えた。さっきまでいた地上とは違う世界なんじゃないのかってクラクラした。献血のあとだったから貧血だったのもあるのだろうけど、人の命を救うための活動をしているこのビルで人がとび降りて死んでしまったこと。 SNSで「死ぬなら人に迷惑をかけないで死のう」って「自殺はダメだけど人に迷惑をかけるのはもっとダメ」ってつぶやかれているの見て いや、自殺の方がダメだよって人に迷惑をかけてでも生きていて欲しいって、ていうか薄情だって思って そう思って生きてっていいの?ってわけわかんなくなってまたクラクラしていた。私とそう歳も変わらない子がもしかしたらここよりも高いところから、落ちたという事実と自ら日々の生活を終わらせようとしたのかもしれないということ、それを死ぬのならと仮定して、他人をどうとか考えられなくて、ただただ怖い。死のうと思ったのは、そこまでに至るそれがあったから。人が自ら死を選ぶこんな世界からでるその意見は当たり前として取り上げられるのかな。大きな声の人の意見だけが届くだけなのかもしれないし、既に毒されているのかもしれない。無力だなって、ヒビを見つめてあの高さを思い出して「顔色悪いよ」って言われて我に返って考えるのをやめた。

 いや、やめようとしたけどいっぱいいっぱい抱えてしまって誰かにこれを軽くしてもらいたくて、隣にいた妹に言った。「ここでとび降り自殺をした人がいるんだって。あれはそのヒビなんだって」って。この子はどう考えるんだろうと思うのと2秒くらいあとにひどいお姉ちゃんだなって後悔した。こんな小さい子に自分の持てないものを持って欲しいと思うなんて。

妹は、「いじめられたらすぐ帰ってくるんだよ」って言って私の手を握った。

 また色んなのが溢れてきてぐちゃぐちゃになった。「うん。でも、いじめられるくらいなら学校行かないわ」って妹の手を握り返した。妹は私の顔を見て、笑い合って心が痛かった。

どっちがお姉ちゃんか分かんないなって思いながら、「ありがとう」って言った。